2023年2月15日 参議院資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会 参考人質疑

◆テーマ

資源エネルギーと持続可能社会をめぐる情勢(資源エネルギーの新たな局面と日本への影響)

◆参考人出席者

大橋弘・東京大学公共政策大学院教授(専門:産業組織論、競争政策)

山下ゆかり・一般財団法人日本エネルギー経済研究所常務理事(専門:エネルギー需要分析、エネルギー統計、エネルギー・環境政策分析、省エネルギー対策)

大島賢一・龍谷大学政策学部教授(専門:環境経済学、環境政策)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

本日は、大橋参考人、山下参考人、大島参考人、御多忙の中、御出席いただきまして、ありがとうございます。

私は、ALSという難病により全身麻痺で、喉に穴を空けて人工呼吸器を付けており、声を出すことができません。そのため、事前に作成した質問をパソコンで読み上げさせていただきます。聞きづらい点もあるかもしれませんが、御容赦いただければ幸いです。

まず、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格高騰の影響について3人の参考人の皆様にお尋ねします。

ロシアに対する経済制裁で、アメリカやEUはロシア産の原油、天然ガス、石炭の輸入を禁止したり、価格制限をしましたが、ウランは対象としていません。アメリカ、EUは原発燃料となる濃縮ウランをロシアに一定程度依存しているとお聞きします。日本はウラン燃料はロシアに依存していませんが、いずれにしても、石油、石炭、天然ガス由来のエネルギー資源を輸入に頼っており、国際政治情勢に左右されることに変わりありません。

このような状況下で、日本のエネルギーの安全保障についてどう考えていくべきか、御見解をお聞かせください。

○会長(宮沢洋一君)

それではまず、大橋参考人、お願いします。

○参考人(大橋弘君)

ありがとうございます。

我が国、まだその国産のエネルギー100%で全ての電力あるいはその燃料を賄うことはできないということを前提として考えると、やはり一定程度輸入に頼らなければならないという状況にあります。

そうした観点でいうと、やはりそのいろいろな国際情勢の変化がある中で、ある程度そのダイバーシティーを保つというか、エネルギーのそのミックス、つまりその電源、燃料の、様々な燃料のミックスをしっかり確保していくということが極めて重要だというふうに考えています。

それは、恐らくおっしゃられたその石油、石炭だけじゃなくて、可能性があれば、ウランについても同様ということではないかと考えます。

ありがとうございます。

○会長(宮沢洋一君)

次に、山下参考人。

○参考人(山下ゆかり君)

御質問ありがとうございます。

大橋委員のおっしゃったこと等に加えて、実は、将来これから利用するエネルギー源についても、先ほど水素やアンモニアの可能性を申し上げましたが、CCSの適地も含めて海外との連携が日本は必要です。輸入をしなければいけない、あるいはCCSをどこでやるかということも、日本国内だけでは足りない可能性があります。

そういう意味では、様々な国と連携をする、様々な国から輸入するが、エネルギー源そのものの多様性に加えて、今後も、化石燃料を使わなくなっても必要だというふうに考えております。

以上です。

○参考人(大島堅一君)

御質問いただき、ありがとうございます。

エネルギーについては、日本は、化石燃料、ウラン燃料、どちらも輸入資源です。なので、これに依存する限り、国内的なエネルギー安定供給という意味では満たすことができません。では、どうしたらいいかというと、やはり再生可能エネルギーは唯一、本当の意味での国産です。ですので、簡潔に申し上げれば、再生可能エネルギーを100%にするような政策をこれから大胆に取っていくことが日本社会にとって、また日本の経済にとって自立性を高める道だというふうに思っております。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

次に、大島参考人にお尋ねします。

政府は10日、原発の60年を超える運転容認、建て替え推進などを盛り込んだグリーントランスフォーメーション実現に向けた基本方針を閣議決定し、福島第一原発事故後の原発政策を大転換させました。

しかし、地震や老朽化、テロなどによる原発事故のリスク以外にも、行き場のない放射性廃棄物の問題など、原発には様々な問題があります。高レベル放射性廃液は、ガラス固体化して地下三百メートルの深層で何万年も管理する必要があるなど、とても持続可能なエネルギー政策とは言えません。また、大島参考人の資料にもありましたように、原発はライフサイクルの中で自然エネルギー以上のCO2を出しています。また、ウラン鉱の採掘、定期検査、廃炉の過程で被曝労働を伴い、決してクリーンなエネルギーとは言えません。

日本のエネルギー政策が原発依存に回帰することで、再生可能エネルギー推進への影響をどうお考えでしょうか。

○参考人(大島堅一君)

御質問いただき、ありがとうございます。

委員がおっしゃるように、原子力政策の転換をしたことは、今後大きな禍根を残すことになると思います。あと、グリーントランスフォーメーションの中に原子力発電を入れることは極めて各国でも異例のことだと、これがグリーンかというふうにやはり思わざるを得ません。お話しいただいたように、福島原発事故からまだ十二年しかたっておりません。それから、それによって苦しめられた人々はまだ大勢いらっしゃいます。

また、今後、放射性廃棄物の処分や汚染された地域の再生には多くの手間とコストが掛かっていきます。そういう意味では、原子力発電に、いまだにまたもう一回やるというのは、何といいますか、もう一度やるというのは大きな転換点過ぎて、私にも合理性が見出すことができません。

そういった意味では、再生可能エネルギーの普及を大きく進め、100%にする必要があります。特に、再生可能エネ100%にすることは、といった目標を持つことは、かつては、私が研究を始めた頃、三十年ぐらい前ですと、再生可能エネルギーということ自体を御存じない方がほとんどでした。あと、福島原発事故の前は、FITと言っても誰も分からないような状況でした。今は、再生可能エネルギーがもう4分の1ぐらいの電気を供給するようになっています。かつての原子力ももう凌駕するようなものになっており、かつ、その伸び、成長率というのも非常に高いということです。

これは経済的にも非常に優れておりまして、先日調べておりましたら、例えば関西電力の子会社である関電工だったと思うんですけれども、空前の黒字だということのようです。それ、なぜかということが電気新聞か何かに書かれておりまして、それが再生可能エネルギーの工事が増えたからだというわけですね。つまり、それはやっぱり仕事をたくさん生み出す効果があるわけです。片や、原子力になると、もう五十基体制で組んでいた産業がもう十基しか動いておりませんので今後の見通しが暗いと、人材も確保できないというものばかりがレポートとして出ております。一体この国はどこに向かうのかと。それは、選択はすることができます。また原子力やるという選択ももちろんあります。ただ、もうそれではなくて、再エネルギーに行こうという選択肢もあります。それは非常に大きな分かれ目であり、国民が選び取るべきものだというふうに思っております。

ですので、繰り返しとなりますけれども、国民的な議論を通して、どのようなエネルギー源をつかみ取っていくのかというのを若者を含めて議論すべきだというふうに強く思っている次第です。

ありがとうございました。

○舩後靖彦君

参考人の皆様には、貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。

これで質問を終わります。