2023年4月20日 参議院文教科学委員会 参考人質疑(私立学校法改正案)
【参考人】
村田治・関西学院大学前学長、同経済学部教授、大学設置・学校法人審議会学校法人分科会長
田中雅道・全日本私立幼稚園連合会会長
丹羽徹・龍谷大学法学部長・教授、学校法人龍谷大学理事・評議員
○舩後靖彦君
代読いたします。
れいわ新選組、舩後靖彦でございます。
本日は、村田参考人、田中参考人、丹羽参考人、御多忙の中、御出席いただき、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
私は、ALSという難病により全身麻痺で、喉に穴を空けて人工呼吸器を付けており、声を出すことができません。そのため、事前に作成した質問を秘書に代読してもらいます。
質問の順番が最後ですので、既にほかの委員の先生方が質問された内容と重なる場合もあるかもしれませんが、御容赦いただければ幸いです。
まず、丹羽参考人にお伺いいたします。
現行法では、理事長、理事会へのチェック機能が働かず、そのために、一部の法人ではありますが、不正行為、法令違反の不祥事が起きてきたわけで、学校法人のガバナンス改革は必要と存じます。しかし、学校法人のガバナンスとは、つまり業務の執行体制、経営体制の問題であります。今回の法改正は、その体制、組織を透明性がありチェック機能が働くものにしていくことだと捉えております。
そこで気になるのが、学校法人のガバナンス強化と法人が設置している公教育機関としての私立学校、大学、大学運営との関係についてです。私立学校、大学の教学に関する規律のマネジメント、教育や研究の自主性との関係を教育法の観点からどのように整理すべきとお考えでしょうか。
○参考人(丹羽徹君)
ありがとうございます。
もう既に意見陳述の場でも同じようなことを述べていますけれども、基本的には、学校法人というのは、設置した学校というのが学校教育法に基づいて、あるいはそれは憲法、教育基本法、学校教育法に基づいて運営されるということを想定された学校を設置するということですから、そこに、その部分に介入するということは本来的にはできないというふうに考えています。
したがって、その部分について言えば、学校教育法上様々な仕組みがありますが、まあ学長がいて、それで現役の職員がいてという、そういう組織ですので、そこのところでの自主的な運営が本来的に行われているということだと思います。
ただ、これも申し上げましたけれども、私立学校ですから、ある意味それ経営体ですから、そこにいる教職員もその経営のことを全く無視して、自分たちの都合で、教学でこうしたいから、全部経営がそれに、全部それに責任を負ってちゃんとやるべきだというふうには必ずしもならなくて、やっぱり経営のことも考慮しながら教学というのは自主的に運営をしていくという、先ほど言いましたけれども、ここが微妙なバランスの上に成り立っているというのが私立学校あるいは私立大学の基本的な仕組みだというふうに思っています。
ですので、委員御質問の中にあったように、あくまで私立学校法というのは学校法人のガバナンスの問題であって、学校そのもののガバナンスの問題とはやっぱり切り離して議論しなければいけないというふうに考えています。
○舩後靖彦君
代読いたします。
ありがとうございます。
次に、三人の参考人の皆様にお伺いします。
本改正案をめぐり、有識者会議、ガバナンス会議及び特別委員会と、三つの会議体で議論されてきました。議論の経緯から、本改正案は、一般の公益法人並みのガバナンス強化を求めるガバナンス会議側と、教育研究機関としてのほかの公益法人とは異なる独自の役割を自認する私立学校法人側との折り合いの結果と言えるのではないかと感じております。そのため、理事会、評議会、監事の関係、お互いの機能分担と相互牽制をどう図っていくかについて、それぞれのお立場や同じ学校法人の中でも規模や地域性によって受け止め方が違ってくると拝察します。
そこで、村田参考人、田中参考人、丹羽参考人に、改めて私立学校の社会的役割とガバナンス体制の在り方について、本改正案の不十分な点、あるいは懸念する点について端的にお伺いしたく存じます。
○参考人(村田治君)
今回の改正案について不十分な点ですか。ううん、私は今、今日は学校法人分科会の分科会長としても、その下に特別委員会ができて、今回審議されているわけですので、その立場からいうと、私が不十分な点ってなかなか申し上げづらいのが正直なところなわけですけども、あえてもし申し上げるとするならば、今回、評議員会とそれから理事会の兼職が禁止された、これは非常に大きな前進だというふうに思っております。と同時に、監事、何回も申し上げていますが、監事の選任を理事会が行っていくことが非常にこれも大きな前進だと思っていますし、監事の機能が強化されたことも大きな前進だというふうに思ってございます。
ところが一方で、残念ながら、先ほど吉良先生からも御指摘がございましたように、幾つかの点が完全に寄附行為の中で定められている形にはなっていません。そこは今後、文部科学省の方から事例なりという形で出していただけるものだろうなというふうに思っております。
せっかくのガバナンスのこれから改革をしていくわけですから、不祥事が起こらないような形でやっていきたいな、やっていただければというふうに思うのと同時に、もう一点、先ほども少し強調させていただきましたけれども、経営と教学の分離、これは非常に大きな問題をはらんでしまうと思いますから、経営と教学が一体となってそれができる仕組みをやはり今回の法改正で担保をしていただきたいというのが一番大きな大学人としての願いでございます。そうでないと、結局、法律はできましたけれども、経営と教学が一体に進まないと、今本当に大学は世界の競争の中にさらされて、大学がちゃんと人材育成をしていかないと、日本の経済そのものがどうなるかというところの瀬戸際に来ている状況だと私は認識しております。そういう意味で、大学が経営と教学が一体となって同じ方向を向いて進んでいく、その仕組みというのは物すごく大きな役割を果たしていると思いますので、その点をしっかりとできるような仕組みにしていただきたいというのが私からのお願いでございます。
以上でございます。
○参考人(田中雅道君)
問題点といいますか、この会議といいますか、全体の流れがやっぱり拡大していっている法人に対するコントロールというものの発想になっていると思うんです。拡大していっているという部分の中で捉えていっているところから、我々のもう足下のところは、閉じなければならない、縮小している、そのときにこの今回の改正がどう動くのかというのはまだ読めないというのが現状でございます。
実際、学校法人をこれから閉じていくとき、地域の中の役割が終わったとき、そのときの運用の在り方というのは我々からもまた考えていきたいと思いますし、単にこの法律だけではなくて、柔軟な動かし方をしないと、そこにいる子供たちに迷惑が掛からないような仕組みづくりというものをやっぱり考えていかなきゃならないと思っています。
以上です。
○参考人(丹羽徹君)
既に問題点幾つか指摘させていただきましたけれども、その中で、法人が一方的に突然募集停止をしてしまって、在学している学生にほとんど責任を持たなかったような学校法人も存在をしていたわけですよね。そういうことが起きないようにした仕組みという意味でいうと、少し前進をしているという印象は持っていますが、他方で、やはりなお、これも本当に繰り返しになるんですけれども、寄附行為の中でほぼ白紙委任状態のような形になってしまっている部分があって、その点についてはやはり懸念事項というふうに思います。
さらに、もう一点なんですけれども、監事監査のところで、監査法人がその大学の子会社とか使いながらコンサル業務をしているという場合があったりするんです、同じ法人の中で。その同じところの関係する監査法人の中でコンサルをやって、そこが監査をするなんというような仕組みが可能になってしまっていないかどうかという、そういう問題が残されていると思います。
少し話があったかもしれませんけれども、公益法人の改革の中で財団法人とかなんかというのはそういうのは全部チェックされていると思いますけれども、同じように、学校法人についてもそういうふうにならないように仕組みをきちっとつくっていただければというふうに思います。
以上です。
○舩後靖彦君
参考人の皆様には、貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。
これで質問を終わります。