2023年10月17日 「サー・ロバート・マーティンさんたち講演会~総括所見を踏まえて脱施設を進めよう! 施設に頼らない地域をどうつくるか」に参加

10月17日、衆議院第2議員会館で行われた院内集会「サー・ロバート・マーティンさんたち講演会~総括所見を踏まえて脱施設を進めよう! 施設に頼らない地域をどうつくるか」に参加し、舩後もあいさつをいたしました。

ロバート・マーチンさん講演 院内集会 挨拶

(代読いたします。)

皆様、こんにちは。れいわ新選組、参議院議員の舩後靖彦です。

私は難病のALSにかかり、気管切開して人工呼吸器を付けているため、声を出して話すことができません。そのため、介助者に代読してもらいます。

今日は、ニュージーランドから障害者権利委員会委員のロバート・マーチンさん、そしてカナダとスウェーデンの知的障害当事者運動のリーダーの皆様をお迎えし、脱施設と地域での自立生活の取組みをお聞きする大変貴重な機会をいただき、ありがとうございます。

昨年8月、私もジュネーブに行き、障害者権利委員会による日本政府報告の審査を傍聴してまいりました。マーチンさんとはその時お会いしましたが、日本で再会でき、大変嬉しく思います。

対日審査では、権利委員から厳しい質問がたくさん寄せられましたが、日本政府の回答は制度、施策を説明するのみで、日本の障害者が置かれている人権状況の課題が指摘されているのに、まともな回答はありませんでした。

中でも衝撃的だったのが、入所施設で虐待を受けた経験のあるマーチンさんが、「やまゆり園事件を経てなお、施設で暮らす人が大勢いることについて考え直したことはあるか。どのように資源配分して、長期的、中期的に脱施設化、地域生活への移行を支援していくのか」という質問に対して、厚生労働省は「日本の施設は高い塀や鉄の扉で囲まれたものではなく、お花見もできる。日本政府としてはしっかり地域移行、地域生活支援を進める」と回答しました。これには傍聴者から「何を言いたいんだ」と怒りのヤジが飛びましたが、私は怒りを通り越し,恥ずかしくなってしまいました。

私も施設入所の経験がありますが、花見などしたことはありません。そのような取組みをしている施設もあるでしょうが、障害のない人が、好きな時に好きな人と、好きな場所で花見をするのとは違います。施設にいても花見ができるのだからいいではないかと,障害者を2級市民扱いしていることに気づいていないのです。

昨年9月、障害者権利委員会から大変素晴らしい総括所見が出されました。中でも、緊急措置が必要とされたのが、19条「自立生活と地域社会へのインクルージョン」と24条「教育」でした。総括所見を起草されたお一人、ヨナス・ラスカス氏は,昨年の来日講演で「障害の有無で分離した特別支援教育は、インクルーシブな社会で暮らしていく道のりを否定し、将来、施設で暮らすことにつながる。インクルーシブ教育なくして、障害のある人の自立生活はあり得ない」と明言されました。

しかし、総括所見が出た直後、「多様な学びの場で行われる特別支援教育を中止することは考えていない」と当時の文科大臣が記者会見で答え、特別支援教育からインクルーシブ教育に原則を転換することを否定しました。

厚生労働省は、総括所見を受け、2024年度から26年度までの施設入所者数削減目標を5%以上と、その前の1.6%、前々期の2%から大幅に目標値を引き上げました。しかし、地域生活の資源が足りていないなかどのように実現するか。また、長期的に脱施設をどう実現するか見通しが立っていません。

本日は、すでに入所施設をなくしたスウェーデン、ニュージーランドの取り組み、そしてカナダの知的障害当事者によるピープルファースト運動の取り組みに学び、日本で入所施設や強制入院をなくし、誰もが地域で自分らしく暮らしていくための道を皆さんと共に考えたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

国連障害者権利委員会で初めての知的障害当事者委員であるロバートさん(ニュージーランド)は、自身の経験から、施設がいかに家族・地域社会から障害児者を切り離し、その人生を根こそぎ奪うかを強調。ニュージーランドでどのように施設をなくしたか、また障害者権利委員として各国に脱施設の取組を促してこられた経験をお話しされました。

カナダ、スウェーデンから参加された知的障害当事者運動のリーダー、コリー・アールさん(ピープルファースト・カナダ代表)とエミリー・ムティエンさん(グルンデン協会メンバー)からも脱施設の過程と、地域生活の課題をお話しいただきました。

ニュージーランド、スウェーデンではすでに入所施設は解体され、カナダでもオンタリオ州、ブリティッシュ・コロンビア州で施設はなくなっています。スウェーデンでは法律で2000年までにすべての入所施設を解体することを決め、達成できない施設には罰金を科したそうです。ニュージーランド、カナダの一部の州でも、脱施設の5か年計画を立て、5年ごとにどこまで進んだかチェックをして進めたそうです。

しかし、箱物の巨大施設はなくなっても、3か国とも地域生活の実態にはまだ課題は多いとのことでした。施設を出て、地域ではなく病院やナーシングホームに移る人もいること。また知的障害のある人の多くがグループホームで暮らしているが、支援職員の都合で生活が制限され、自分の生活を自分でコントロールできていないこと。地域の中にミニ施設が点在している状況は、日本と同じ課題を抱えていると言えます。

「施設をつくるのはレンガやモルタルといった建材だけではない。人の考え、行動、態度こそが施設をつくる」。「今こそ脱施設化に焦点を当てる時。(脱施設に向けた)予算と期限をつけた計画を立ててください。共に行動を起こせば、変化を起こすことができる」(ロバートさん)

「施設の定義は決して規模によるのではない。人々が自分に関することを自己決定できない、コントロールできない状況こそが施設」(コリーさん)

「日本人はまじめで勤勉なのに、なぜ未だに施設で暮らす人がこんなに多いのか? (津久井やまゆり園事件があっても)日本は施設を本気でなくそうと思っていないのか? 次に日本に来るまでに、どれだけこの状況が変わったか、ちゃんと見せてください」(エミリーさん)

3人の世界的な知的障害当事者運動のリーダーからの叱咤激励を受け、各国の先進的な取組とその課題に学び、入所施設に頼らないインクルーシブな地域社会をつくるために、当事者団体、支援する方々、関係機関の職員などと共にさらなる取り組みを進めてまいります。