2023年11月16日 文教科学委員会質疑(文部科学大臣所信について/旧統一教会の被害救済・教員不足・インクルーシブ教育)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

盛山大臣御就任後、初めての質疑となります。これからどうぞよろしくお願い申し上げます。

私は、難病ALSの進行により、全身麻痺になっております。さらに、喉に穴を空けて人工呼吸器を付けておりますので、声を出すことができません。そのため、パソコンによる音声読み上げで質問をいたします。また、再質問の際には、介助者に文字盤を読み取ってもらい文章を作成し、秘書による代読によって質問を行います。パソコンの音声が聞き取りづらい部分があるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

それでは、質問に移ります。

去る10月13日、文部科学省は、旧統一教会、現世界平和統一家庭連合の解散命令を東京地裁に請求し、受理されました。憲法に保障された信教の自由をもってしても、旧統一教会による長期的、継続的な経済的被害は甚大であり、著しく公共の福祉を害する違法行為と判断されてのことと思います。

しかし、旧統一教会への損害賠償請求の民事裁判のピークが1990年代、2000年代だったこと、また旧統一教会がコンプライアンス宣言をした2009年以降も損害賠償を認めた判決が出ていることを勘案しますと、自民党を中心とする政治家と旧統一教会との癒着が被害を深刻化、長期化させた大きな要因となったのではないかと疑惑が湧いてきます。

大臣御自身も旧統一教会の関連団体の会合に出席し挨拶されていますが、政治と宗教との癒着の解明はきちんとなされたとお考えでしょうか。また、被害者救済のための対応をいかが進めるおつもりでしょうか。

○国務大臣(盛山正仁君)

その癒着の解明とおっしゃるんでしょうか、その部分につきましては、これまで何度もいろんな場でこれまでも発言もしてまいりますが、確かに一回だけ、これが旧統一教会の関係とは知らずに出ましたけれども、それだけでございまして、その後、一切の関係はございませんし、これからも関係は一切絶つつもりですということは、自民党の調査を始め、この国会の場でも何度も御説明しているところであります。

旧統一教会の関係でございますけれども、多数の被害者の方々がおられる、そしてそれは深刻な問題であるということを我々理解しているからこそ、これまで文部科学省では、7回にわたる報告徴収・質問権の行使、その他の情報収集等を通じまして、その具体的な証拠、資料、こういうものを収集しまして、舩後委員の方からも御発言がありましたとおり、先月、10月13日に、東京地方裁判所に対して解散命令の請求を行ったところであります。

今後、この場は司法の場にその判断の場が移っているわけでございますので、我々、その原告側であります政府としては、当該請求に係る裁判所における審理等への対応に全力を尽くしていきたい、そういうふうに考えております。

また、被害者の救済につきましては、先ほどもちょっと発言をしたところでございますけれども、現在の法制度の中における救済につきまして、法テラスその他、政府全体で援助等を行っているところであります。

関係省庁とも連携をしながら、今後とも速やかな救済が図られるよう、現行法の下、最大限努力していきたいと考えています。

○舩後靖彦君

旧統一教会への解散命令請求が政治と宗教の癒着をごまかす結果に終わらないよう、また被害者の救済がきちんとなされるよう、早急な措置をお願いし、次の質問に移ります。

大臣は所信において、質の高い教師の確保を図ることは喫緊の課題であり、学校における働き方改革の更なる加速化、処遇改善、学校の指導、運営体制の充実、教師の育成支援を文部科学行政の最重要課題として一体的に進めるとおっしゃいました。私も、現場の先生方、親御さんとお話をするたび、先生がいなくて教頭先生が代わりに担任をしている、産休、育休の代替が見付からないと、悲鳴のような声をお聞きします。

昨年度の教員勤務実態調査でも依然として教員の長時間労働が続いていることが明らかとなっており、教員不足を打開するために検討、諮問された中教審初等中等教育分科会質の高い教師の確保特別部会は、8月28日、緊急的に取り組むべき施策として、資料1のように提言しました。

しかし、これについて小学校の先生方数名に御意見を伺いましたが、掛け声はいいが取組の具体策はほとんど実効性がないと口をそろえておっしゃいました。学校、教師が担う業務の適正化について、学校の業務とは、授業だけでなく、学校にいる間の子供たちの生活全てが一体化しており切り離せない、確かに部活などは外部の人に委託可能だが、そこで子供同士の関係に問題が生じた場合、教員がふだんから見ていないことで対応が遅れることがある、教科担任制も同様のデメリットはあると言います。

資料2を御覧ください。

業務の適正化の中で最も進んでいるのが、支援が必要な児童生徒、家庭への対応に専門人材の参画を図ることで、97・2%の教育委員会が実施しています。

これについて、担任一人で問題を抱え込むのは無理があり良くない。一方で、担任が前の担任や学年集団と相談して、当事者の子供、親、クラスの子たちの関係を解きほぐしていく努力をしないまま、学校に配置されている支援担当に投げてしまうことがある。しかし、支援担当は担任を持たず、子供と一緒に生活していないので、宙に浮いた存在。そのままスクールカウンセラーや特別支援教育コーディネーター、スクールソーシャルワーカーという専門家につなげられて、担任がらち外に置かれ、問題自体が宙に浮いてしまう。結局、問題を抱えた子との関係の中で、担任もクラスとしても鍛えられる経験を失い、担任が力を奪われていく。教員がゆとりをなくし、ぎりぎりでやっている中で問題をアウトソーシングすることで、トータルで悪い方向に行っているのではないかと危惧する声が聞かれました。

小学校高学年の教科担任制も、専科教員を増やせるならいいが、教員不足のため担任しながら学年の中で専科を割り振るので、授業準備の負担は減るが、担当のこま数が減るわけではない。その一方で、道徳や高学年での外国語の教科化、キャリア学習など次々に学校に持ち込まれ、教える量が増える一方。結論的に言うと、教員の仕事を仕分けして一部をアウトソーシングする対症療法でなく、仕事の総量、特に教員の中心的な業務である授業で教える内容、こま数を減らすしかないとおっしゃいます。

教員の処遇改善はもちろん歓迎いたします。しかし、長時間労働に対して調整額の定額制でなく労働基準法にのっとって残業代を払ってほしいというのはもっともな要求ですが、多忙化、長時間労働の根本原因にメスを入れないで、残業代を払えばいいというものではないと思います。根本的には、対GDP比でOECD最低ランクの教育予算を飛躍的に増やし、教員定数の改善、少数人数学級化を図り、教員の数を増やすことが必須です。

文科省としても、予算獲得に尽力されているのは理解します。しかし、社会全体の働き手不足の中で教員志望者が減少し、採用倍率が下がっているのが現実です。予算が獲得でき、定数拡大できたとしても、教員の働き方改革を進めない限り、ブラック企業と言われる学校に教員のなり手が増える見込みは立ちません。

教員の負担を減らし、子供たちが安心して学べる環境を維持するには、教える内容の精選、授業のこま数を減らすことが必要です。次期学習指導要領の改訂に向けて、大臣、早速取りかかっていただけませんか。

○国務大臣(盛山正仁君)

いろいろ御指摘をいただきまして、まずありがとうございます。

今日も朝から様々な先生方からいろんな御指摘をいただいたところでございますけど、舩後先生にお答えをこれからさせていただきますが、まず、学習指導を始めとして、教師が教師でなければできないことに全力投球できる環境を整備するため、教職員定数の改善を含めて、学校における働き方改革を進めていくことが重要であると我々考えております。

教職員定数の改善については、令和6年度の概算要求において、小学校の35人学級の計画的な整備、小学校高学年における教科担任制の強化など、合計5900人の定数改善を要求しているところです。

また、国が定める学習指導要領は、中央教育審議会における専門的な御議論も踏まえた上で、これからの社会を生きていく子供たちに必要な資質、能力を育成するために必要な内容を記載しているものです。このため、学習指導要領の内容については、教師の業務改善のみを理由として削減するというものではなく、子供の学びの観点から考えていくもの、考えていくべきものでございます。

授業時数につきましては、令和5年9月の通知において、全ての学校において授業時数の点検を行うとともに、特に標準授業時数を大幅に上回って教育課程を編成している場合には、見直すことを前提に点検を行い、指導体制に見合った計画とするよう求めたところであります。

文部科学省としては、教育の質の向上に向け、学校における働き方改革の更なる加速化、処遇改善、学校の指導、運営体制の充実、教師の育成支援を一体的に進めてまいります。

○舩後靖彦君

次に、増え続ける不登校、いじめの問題についてお聞きします。

大臣は、誰一人取り残されることなく、子供たちの学びの機会を確保するとして、本年3月に取りまとめた不登校対策のCOCOLOプランの取組の前倒しなど、不登校・いじめ対策を緊急強化するとおっしゃいました。

資料3を御覧ください。

中学校では、改訂指導要領が実施され、ゆとり教育が始まった2002年からそれまで増え続けていた不登校生徒の割合の伸びは止まり、脱ゆとり教育として新たな指導要領が施行された2012年以降、再び増加に転じています。小学校でも、2013年以降、増加しているのが見て取れます。

このデータからも、教える内容、授業時間数が軽減され、教員の負担が少ないときは、子供に向き合う時間が取れ、子供たちが安心して学校に通える状況が保たれていたと考えます。しかし、ゆとり教育で学力が下がったと言われ、2006年には早くもゆとり教育の見直しが始まりました。2007年に全国学力テストが悉皆調査で始まり、47都道府県が1位から47位まで序列化されました。競争が激化する中、ゼロトレランスで標準化された学校教育の実践が広がりました。各学校にスタンダードが作られ、整列の仕方やおじぎの仕方まで細かく規定して、子供の行動を規格化していくことが広がりました。このように学校が集団の規律を強化すれば、それに合わせることができず、はじき出される子供は当然増えていきます。そのような抑圧的な環境の中では、いじめも不登校も増えていくのは当然だと思います。

その意味で、今回出されたCOCOLOプランに、学校の風土と欠席日数には関連を示す例とあり、学校の風土を見える化し、学校をみんなが安心して学べる場所にすると、校則など学校の在り方を見直す方向性が打ち出されたことは歓迎いたします。

その具体策の中で、学校を障害や国籍言語などの違いにかかわらず共生社会を学ぶ場にとありますが、これは、障害の有無や国籍、使用言語などの違いにかかわらず共に学ぶインクルーシブな教育に取り組むということなのか、あるいは単に障害のある子や外国籍の子供を対象として理解するということでしょうか。

○政府参考人(矢野和彦君)

お答え申し上げます。

今委員から御指摘のございましたとおり、文部科学省におきまして、本年3月に公表したCOCOLOプランにおきましては、柱の一つとして、学校を障害や国籍言語等の違いにかかわらず共生社会を学ぶ場にするということを盛り込んだところでございます。

これにつきましては、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に過ごすための条件整備と併せて、一人一人の教育的ニーズに応じた学びの場の整備を両輪として取り組み、障害のある子供を学校全体で支えられるようにするということや、外国籍の子供等が多様性を尊重しつつ共に学び合える環境を整備すると、こういうことを目指しており、共に学ぶインクルーシブな教育に取り組むことを意味しているところでございます。

以上でございます。

○委員長(高橋克法君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(高橋克法君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

大臣、私のような24時間ケアが必要な議員が誕生して、国会は変わられたと考えておられますか。

○国務大臣(盛山正仁君)

大いに変わったんじゃないでしょうか。

御案内かどうかあれですが、私は、平成10年に駅のエレベーター、エスカレーターを付けるところを皮切りに、障害者施策というんでしょうか、バリアフリーだけではなく障害者施策に取り組んできたつもりでございます。

平成三十年、駅にエレベーター、エスカレーターの設置を始めた当初、今では信じられないと思いますが、東京駅の新幹線のホームにエレベーター、済みません、エスカレーターは、いや、エレベーター、ごめんなさい、エレベーターはありませんでした。つまり、全国ほとんどの駅にエレベーター、エスカレーターがなかったのが、今ここまでやってまいりました。もちろん、足の悪い方のための段差の解消が優先されて、そして、聴覚障害の方、視覚障害の方、あるいはそのほかの障害をお持ちの方の対応策というのはまだまだその段差の解消ほどにはいっていないところはありますけど、それでも大きく変わってきたと思います。

そして、舩後先生がお入りになって、国会の中の本会議場を始め、机ですとか通路の配置も変わってまいったと思いますし、このような形での質問の仕方、こういうものが認められるようになったということで、大きくその国会の中でのやり方、ルール、そういうものが変わってきたと、そういうふうに私は感じております。

そういう点では、やはり、大変難しい病気をお持ちの、先生のような障害をお持ちの当事者が議員になられて、そしてその議会での活動をされる、そして、それに対して、我々国会議員ももちろんそうでございますが、多くの国民の皆様が、障害を持っていてもほかの人と同じように活動ができるんだ、あるいは活動できるように変えていくんだと。つまり、医学的なモデルではなく、社会的、社会学モデルという言葉も使いますけれども、周りをその我々の心の中の持ち方を含めて変えていくことが必要なんだということは多くの方々に認識されるような舩後先生の御活動になっていると私は感じております。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

参議院では、私たち重度障害者が議員になったことで、議場のバリアフリー化、委員会や本会議での質疑の際の合理的配慮などが進みました。何よりも、議員の皆様の対応が変わられたことを感じております。

24時間全介助、コミュニケーション支援や医療的ケアの必要な私がどのようにして議員活動をするのか、この委員会にいらっしゃる委員の方々は委員会質疑や視察などを通して御理解いただいています。このように、一緒にいることで初めて理解や意識の変化は生まれます。

議員には選挙を通じてしかなれませんし、国会議員は日本国籍を有していないとなれません。一方、公立学校は、住民登録さえあれば、国籍や障害関係なく、一定の年齢になれば憲法で保障された権利として通うことができます。しかし、誰一人取り残されないといいながら、重い障害のある子の地域の学校への就学が拒否される例が後を絶ちません。一緒にいるための入口が閉ざされているのです。

校区の学校に通わせたいと言っても、子供のためにならないと特別支援学校を強く勧められる。通常学級では勉強が付いていけずに放置される。子供がかわいそう。普通の学校に通わせたいというのは親のエゴ。これらは、今年、地域の小学校に入学された障害のあるお子さんについて、就学相談の際に親御さんに投げかけられた言葉です。こうして就学相談で地域の小学校への就学を拒否する言葉に心折れて就学を諦めた親御さん、あるいは違う地域に引っ越して小学校に入学させた親御さんもいらっしゃいます。また、通常学級に入学したものの、付添いを強要され、特別支援学級に籍を移した親御さんもいらっしゃいます。

可能な限り共に過ごすための条件整備と多様な学びの場の条件整備を両輪とする限り、本人、保護者の意思に反した特別支援学校、学級への振り分けはなくなりません。大臣、この状況をどうお考えになりますか。

○国務大臣(盛山正仁君)

障害者権利条約であり、差別解消法その他いろいろ整備されてきているというふうに思います。しかしながら、今おっしゃられたように、我々、インクルーシブ教育というものを文部科学省としても模索をしているというか、その達成に向けて動いているところでございますが、今、舩後先生から御指摘があったような現実があることも、私、承知しております。

平成12年の交通バリアフリー法の制定のときの国会の審議からでございますけど、我々は心のバリアフリーということを申し上げてまいりました。ハードの施設整備のバリアフリー、これはやっていかなければならないんですけれども、それだけでは済みません。そこはやはりソフトの部分、心のバリアフリーだと思います。お困りの方に手を差し伸べる、あるいは、どうすればその困っている状態から脱することができるんだろうか、そういうふうに相手の立場をおもんばかるということが大事だと思います。

今おっしゃった学校のことに関しましては、我々文部科学省がある程度所管をいたしますけれども、多くの国民の方々の心あるいは認識、これを改めていただくということは我々文部科学省だけでできる問題ではありません。政府全体の中で、あるいは広く内閣府が所管する障害者政策の一環として、心のバリアフリーというか共生社会の確立を私どもも目指していきたいと考えております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

私は、学校を共生社会の場にしていかなくてはいけないと考えます。地域の学校で共に学ぶことを、選択ではなく、共生社会の当たり前の前提であることを申し上げて、質問を終わります。