2023年11月29日 参議院文教科学委員会質疑・反対討論(宇宙開発にかかわるJAXA法案)
○舩後靖彦君
れいわ新選組、舩後靖彦でございます。本日もよろしくお願いいたします。
本日は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構法の一部を改正する法律案についての質疑ですが、その前に一点、在外教育施設における派遣教員の方への手当について質問いたします。
今回の補正予算案で在外教育施設における一人一台端末を進めるとされています。それ自体は大切ですが、私が以前からこの委員会で訴えている派遣教員の方への手当の対策については予算化されていません。急激な円安が進行し、実質的な手当減、負担増が続いています。
今年の夏に、外務省が外交官への手当を外貨で支給するという報道がありました。資料一を御覧ください。
文科省も検討しているとお聞きしていますが、遅過ぎるのではないでしょうか。海外で暮らす日本人の子供のために懸命に働いている方々を支えるため、これこそ緊急でやるべきことではありませんか。見解をお示しください。
○国務大臣(盛山正仁君)
委員の御指摘に関してでございますけれども、報道で、このような報道が出るというのは、出ているというのは、この資料一だけではなくて、これだけ円安が進んでおりますので、外務省の方で今検討しているということは私も承知しているところでございます。
しかしながら、やはり、この外交官の手当だけではありませんですけれども、これ、法律その他も含めて予算の措置というものが必要になるということでございまして、それで来年度ということで今外務省の方で進めておられるというふうに承知しております。
そして、我々文部科学省におきましては、在外教育施設に対する教師の派遣、そしてその派遣をされている教師に支給する在勤手当につきまして、外務公務員の在勤手当の水準や支給方法を踏まえて設定しているというところでございます。
実際に現地の物価や為替相場の変動等の事情を勘案して手当の額を適時改定しており、例えばニューヨークの在勤基本手当については、派遣教師の経験年数にもよりますけれども、円安前の令和四年一月と比較して、一月当たり六万円から十万円程度増額しております。
文部科学省としては、処遇の改善等を含め、引き続き、派遣教師が在外教育施設において活躍できる環境の整備に努めてまいるつもりです。
○委員長(高橋克法君)
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(高橋克法君)
速記を起こしてください。
○舩後靖彦君
代読いたします。
このことこそ補正予算に入れることではないでしょうか。大臣、御決断を。
○国務大臣(盛山正仁君)
先ほど申し上げましたように、派遣教師に支給する在勤手当につきましては、外務公務員の在勤手当の水準や支給方法を踏まえて設定しているところでございます。外務省において現在検討が進められているところでございますが、我々としましても、関係省庁と協議しつつ、派遣教師の手当の在り方について検討いたしてまいります。
○舩後靖彦君
私は、この一年間で遡って差額を支給するなどの緊急対応が必要だと考えております。命に関わる問題ですので、改めて早急な対応をお願いし、JAXA法案について質問いたします。
私は、宇宙研究について強い関心を持っております。宇宙の更なる解明につながってほしいと宇宙ファンとしては考えております。しかし、残念ながらこの法案には懸念点が多数あると感じております。
以下、質問いたします。
今回の法案によりますと、合計三千億円の基金の使い道については、内閣府の宇宙政策委員会によって策定する宇宙技術戦略を踏まえて、内閣府主導で決定するとのことです。三千億円のうち、文科省が拠出するのは一千五百億円と聞いております。
文科省としては、どのような分野にどのような配分で資金を供給する狙いでしょうか。
○国務大臣(盛山正仁君)
現在、内閣府を中心として関係府省が連携して、宇宙輸送、衛星、宇宙科学・探査の三分野について技術開発の道筋を示す宇宙技術戦略の策定を進めておりますが、宇宙戦略基金では、本戦略で位置付けられた技術の中から、本基金事業で取り組むことが適切な技術等を抽出し、支援対象とするテーマを設定することとしております。
対象とするテーマの設定は宇宙技術戦略の策定を待つ必要がありますが、文部科学省では、例えば、新素材の適用拡大等による将来の民間宇宙輸送システムの低コスト化、高出力なレーザー技術を活用した革新的な衛星観測の実現、将来的な民間宇宙ステーションへの物資補給に係る市場の獲得などを想定テーマとして、今回の補正予算案の計上額の積み上げを行っております。
今後、内閣府を始めとする関係府省や有識者等との議論を踏まえつつ、具体的なテーマの設定やテーマに応じた支援額、支援機関等の検討を進めてまいります。
○舩後靖彦君
質問を続けます。
先ほども申し上げたとおり、宇宙戦略基金は内閣府主導で使い道を決められることになり、政府トップダウンで決められることになります。なぜこのような仕組みにしたのでしょうか。このような仕組みにせず、文科省が独自に優先度を判断し供給先を決めればよいのではないでしょうか。この点についての見解をお示しください。
○国務大臣(盛山正仁君)
国際的な宇宙開発強化が、競争が激化している中、我が国がこれに伍していくためには、民間企業及び大学等が有する技術的優位性や市場動向等の分析に基づく勝ち筋や宇宙活動の自立性確保の観点から必要となる技術を見極めつつ、産学官の総力を結集して対応していくことが重要です。
このため、先ほど来のやり取りでもございましたが、現在、宇宙開発利用に関する政策の総合調整を行う立場にある内閣府を中心に関係府省が連携し、我が国として推進すべき技術とその方向性を示す宇宙技術戦略の策定を進めています。本事業では、この戦略を踏まえつつ、支援対象とするテーマを設定することとしています。
文部科学省としては、こうした宇宙技術戦略の策定や支援対象とするテーマの設定に加え、今後の事業の実施等に向けて、引き続き研究開発の現場の意見も踏まえつつ、内閣府などの関係府省と密に連携して取り組んでまいります。
○舩後靖彦君
質問を続けます。
現在、世界各国で民間企業が様々な形で宇宙ビジネスに力を入れていることは認識しております。従来の官需から民需に移行しているとも聞きます。そうした流れの中で、日本においても、新しい分野に国が率先して注力すること自体は否定しません。しかし、民間が実施する宇宙ビジネスはあくまでビジネスです。そこにあるのは利益追求です。もうかることを優先する分野にばかり公的資金を注ぎ込むことが妥当であるとは思えません。国としては、なかなか利益がすぐに出にくい基礎科学の分野に特化して取り組むことが妥当なのではないでしょうか。利潤ばかりを優先した結果になることを最も懸念しています。
この点について、文科省の見解をお聞かせください。
○国務大臣(盛山正仁君)
本基金は、その目標として、宇宙関連市場の拡大のみならず、宇宙を利用した地球規模、社会課題解決への貢献、そして宇宙における知の探求活動の深化、基盤技術力の強化を掲げているところです。
宇宙分野の研究開発や事業化は不確実性が高く、技術開発の初期段階では民間市場での十分な資金獲得が難しい状況にあることから、欧米の宇宙開発機関においても、民間企業等が行う研究開発を公的な資金供給によって支えるとともに、シーズ研究を担う大学等への資金供給も併せて行っているところです。
文部科学省としては、本基金事業を通じた将来の技術革新や大学発スタートアップ等につながり得る息の長い基礎研究や基盤的研究開発への支援に加え、JAXAの運営費交付金によるJAXA自身の先端基盤技術開発能力の拡充強化にもしっかり取り組んでまいります。
○舩後靖彦君
基礎研究や基盤的研究開発、それを支える人材こそ重要です。文部科学省は、この点を大切にしていただきたく存じます、もうかる分野ばかりではなく。
このことを申し上げ、質問を終わります。
○委員長(高橋克法君)
他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○水野素子君
立憲民主・社民の水野素子です。
私は、会派を代表し、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構法の一部を改正する法律案に対して反対の立場から討論いたします。
私は、昨年七月までJAXAで約二十八年働いておりました。宇宙開発利用の歴史を振り返ると、日本では、戦後、私の地元神奈川の相模原、宇宙科学研究所のロケット開発で始まり、世界で四番目に国産の技術で人工衛星とロケットに成功する偉業を達成いたしました。
一方で、産業化を目指す宇宙開発事業団も設立され、機関統合によりJAXAとなりました。二〇〇八年の宇宙基本法により国の宇宙開発利用の目的として安全保障を含む実利用が明確化され、二〇一六年の宇宙活動法により宇宙ビジネスの許認可制度がスタートし、宇宙ビジネスが飛躍的に広がりました。
私は、宇宙法施策検討やベンチャー支援の実務に携わってきた経験から、また宇宙が今や世界的に大変重要な戦略領域でもあるため、国が資金を投入して宇宙産業を促進することは意義があると思っています。また、宇宙ベンチャーがJAXAなどから特に技術面での支援を必要としていることも理解しています。
一方で、JAXAの本来業務である研究開発が世界から残念ながら遅れつつあり、最近失敗が続いていることも心配しています。そして、世界をリードする研究開発に邁進するよりも、政府や企業などを支援する言わばお手伝い業務が増えており、一方で、人員、特に経験ある技術者は限られており、本来業務である研究開発の現場を圧迫していることを心配しています。また、JAXAには基金運用や事業性評価の知見は乏しいため、総額一兆円にも上る基金の運用を適正に行えるのか、JAXAに行わせることは合理的なのか。逆に言えば、千三つ、千に三つも当たれば成功とも言われる失敗リスクの高い投資業務を、税金を原資とし、厳しい説明責任が求められる業務として投資に不慣れなJAXAが担当することがJAXAの将来のためになるのかも心配です。
そもそも、立憲民主党として、基金という制度、また補正予算であることについても課題を提示しています。宇宙開発やベンチャー振興は単年度で終了することが難しいため、基金という形式を取ることに一定の合理性はありますが、休眠基金の問題など、国全体として基金の見直しが行われようとしています。また、本基金の運営、公募の詳細はこれから策定という状況では、財政法第二十九条により緊要性を前提とする補正予算の趣旨には合致していないため、このタイミングで法改正を行う必然性はありません。
以上のことから本法案には反対し、私の討論といたします。
御清聴ありがとうございました。
○吉良よし子君
私は、日本共産党を代表し、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構法一部改正案への反対の討論を行います。
本法案は、JAXAの業務として、宇宙科学技術に関する先端的な研究開発の成果を活用し宇宙空間を利用した事業を行おうとする民間事業者、当該民間事業者と共同研究開発を行う大学や研究機関が実施する先端的な研究開発に対して必要な資金を充てるための助成金の交付に関する業務を追加するとともに、十年後に一兆円規模となる基金を設けようとするものです。
そもそも、宇宙開発について、一九六九年五月九日の衆議院本会議で、わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議が上げられ、この中で、平和の目的に限ることとされていました。ところが、二〇〇八年に制定した宇宙基本法で、我が国の安全保障に資するよう行わなければならないとされ、二〇一二年にはJAXA法が改悪され、機構の目的から、平和の目的に限りという文言が削除されました。
こうした下で、国家安全保障戦略及びそれに基づく宇宙基本計画の中で、民間の宇宙技術を軍事のために活用し、宇宙産業を発展、促進することが目指されるとともに、宇宙安全保障構想では、政府が安全保障上重要な技術開発を行う企業を支援する協力形態を拡大し、民間イノベーションも含めた民間主導の開発を促していくと述べています。
つまり、本法案による基金による民間支援は、民間の宇宙技術の防衛への活用という政府の宇宙安全政策、安全保障政策と軌を一にするものであり、その支援をJAXAに担わせようとするもので、到底賛成できません。
政府、防衛省がニーズを示し、デュアルユースの名で軍事研究をさせるやり方は、憲法の平和主義とは相入れない上に、学問の、学問研究の発展を阻害するものです。非軍事の下で研究者が自由に研究できる環境の整備、支援こそが重要であることを指摘し、討論を終わります。
○舩後靖彦君
私は、れいわ新選組を代表し、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構法の一部を改正する法案に反対する討論を行います。
本法案は、JAXAに宇宙戦略基金を設け、先端的な研究開発を行う民間事業者や大学に対し資金を交付するというものです。文科省から一千五百億円を拠出するなど、合計三千億円規模になるとのことです。
先端研究の分野に国が資金を出すこと自体は否定しません。しかし、どのような分野、企業、大学に資金を出すのは現時点では全く分かりません。選定の方向性は、今後、内閣府主導で設定されるとのことです。これは政府にとって都合の良い分野、事業を選びやすくする上、複数年度にわたって行える基金を用いることで使い道のチェックもしづらく、非常に恣意的な運用がしやすいと言えます。
基礎研究や基盤的研究開発、それを支える人材こそ大切にするべきなのです。この宇宙戦略基金という政策がそれに資するとは思えません。宇宙ビジネスが世界的に拡大する中で、もうかる分野にばかり注力しようとする政府の姿勢は容認できません。
以上の理由から本法案には断固として反対し、討論を終わります。
○委員長(高橋克法君)
他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
これより採決に入ります。