2024年3月22日参議院文教科学委員会質疑(2024年文科省関連予算案について)
○舩後靖彦君
れいわ新選組舩後靖彦でございます。
令和6年度文部科学省の予算案についてお伺いします。
まず、医療的ケアが必要な児童生徒への支援についてお伺いします。
〔委員長退席、理事今井絵理子君着席〕
文科省は、医療的ケアのための看護師配置を毎年拡充し、今年度は前年度比810人プラスの4550人分の予算を付けています。財政的に厳しい中、拡充幅を広げていただいており、感謝申し上げます。
しかし、地方自治体からは、看護師配置が財政的に厳しい、募集しても集まらない、国の補助金がもっと出ればという声を多く聞きます。ある市では、時給1200円で募集をしているが全く応募がない、看護師だけでなく医療的ケアのできるヘルパーでももっと上げてもらわないと事業所が派遣したがらないと、障害のある地方議員の集まりで伺いました。
令和四年の看護師の平均時給は、ボーナスを除いて2144円ですので、地方であっても1200円では応募がないのは当然と言えます。財政的に厳しい自治体では時給を上げられず、看護師、ヘルパー配置が進みません。結局、保護者が付き添わざるを得ない状況が続いています。医療的ケアの必要なお子さんが安心して学校生活を送るために、人件費の下支えは必要と存じます。
そこで、看護師出身のあべ副大臣に伺います。
労働力不足で、それでなくとも看護師、ヘルパーの人材確保が困難です。厚生労働省の障害児者福祉サービスの国庫負担率は2分の1になっています。財政的に時給を上げることのできない自治体もあることを踏まえ、補助率を2分の1に上げることはできませんでしょうか。
〔理事今井絵理子君退席、委員長着席〕
○副大臣(あべ俊子君)
委員にお答えさせていただきます。
文部科学省におきましては、医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律、医療的ケア児支援法でございますが、その趣旨を踏まえまして、医療的ケア児に対する支援の充実に取り組んでまいりました。
具体的には、令和6年度予算案におきまして、各自治体等における医療的ケア看護職員の配置に関わる補助事業を拡充するとともに、医療的ケア看護職員等の確保にどのような課題があるのかを整理するための調査研究事業を新たに実施することにしているところでございます。
その上で、御指摘の補助率に関しましては、国と地方の役割分担の観点も踏まえまして慎重な議論が必要と考えておりますが、引き続き、医療的ケア児に対する支援の充実に努めてまいりたいというふうに思います。
これからも御指導よろしくお願いします。
○舩後靖彦君
次に、高校生への就学支援についてお伺いします。
現在、高校進学率は98%を超え、義務教育を終えたほぼ全ての生徒が高校に通っています。高等学校等就学支援金の拡充により、公立高校に通っている世帯年収910万円未満の生徒の場合は実質無償、私立高校に通っている生徒は、世帯年収590万円までの場合、平均授業料の39万6000円を上限額として支援金が支給されます。さらに、私学に通う高校生に対しては、都道府県が独自に国の制度に上乗せして授業料などの補助金を出しています。
福井県では、2024年度から2人以上子供を扶養している世帯を対象に所得制限をなくし、福井県内の私立高校平均授業料33万5000円まで無償にしました。
東京都も、2024年度から国公私立を問わず所得制限を撤廃し、私立高校の場合、47万4000円の補助をする方針を決めました。
しかし、多くの自治体で、支援対象となる所得基準が設けられています。今回、東京都で所得制限が撤廃されましたが、対象となるのは都内在住の生徒です。近隣の千葉、埼玉、神奈川県から都内の私立高校に通う生徒は、無償化の恩恵は受けられません。こうした自治体間格差に関して東京都は、同じクラスの中で住む地域によって授業料が無償、有償と分かれることへの指摘はよくいただくとした上で、本来は国が統一的な対応をするべきだとしています。
日本は、中等高等教育における無償教育の漸進的導入を定めた国際人権A規約の13条2項(b)、(c)に関して留保していましたが、民主党政権の2012年9月、撤回しました。ほぼ全ての子供が高校で学ぶ現在、後期中等教育の高校は当然国の制度として無償化すべきです。
全国私立学校教職員組合連合の調査によると、3か月以上学費を滞納している生徒は、回答のあった364校中233校に2125人、割合にして0.68%でした。この数字を全国の私立学校生徒数に当てはめると6836人になります。コロナ禍による減収、失業、物価高などの影響で、授業料補助では学費が賄えず、アルバイトをする生徒が増えています。経済的理由でクラブ活動に参加できない、修学旅行に参加できないなど、学校生活、学ぶ権利に支障が出ています。
自治体間格差をなくし、公私立問わず親の収入に関係なく無償にすべきと考えます。即座に無理としても、少なくとも年収九百十万円未満世帯までの私立高校の授業料無償化にすぐに取りかかっていただきたい。福井県、東京都は、100億円単位の予算を掛けて所得制限を撤廃しました。国の予算でできないことではないと思います。大臣、いかがですか。
○国務大臣(盛山正仁君)
国における高校生等の就学支援については、限られた財源を有効活用する観点から、平成26年度に所得制限を設けることで捻出した財源により低所得世帯の支援を拡充し、令和2年度には私立高校等に通う年収約590万円未満の世帯への支援額を更に拡充するなど、より教育の機会均等に資するよう、支援の充実を図ってきたところであります。
他方、各自治体におきましては、地域ごとの私立高校等の実情を踏まえた上で国の支援に上乗せして独自支援が行われており、文部科学省としては、教育の機会均等を図るために基盤として行う国の支援とそれに上乗せをして取り組まれる地方自治体の独自支援が一体となって教育費負担の軽減が図られることが望ましいと考えております。
高校生等の就学支援に係る所得制限の見直しにつきましては、様々な教育政策の中で総合的な観点から考える必要があると我々考慮しております。令和六年度予算案におきましては、低所得世帯の授業料以外の支援を充実したところであります。引き続き、教育費負担の軽減を着実に進めてまいりたいと考えております。
○委員長(高橋克法君)
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(高橋克法君)
速記を起こしてください。
○舩後靖彦君
代読いたします。
日本の教育予算は低過ぎます。OECD平均並みにする必要があります。
大臣、副大臣、私も御一緒しますので、財務省に参りましょう。大臣、答弁をお願いします。
○国務大臣(盛山正仁君)
御発言ありがとうございました。
どのようにすればいいのか、また今後検討していきたいと考えております。
○舩後靖彦君
続いて、私学助成についてお聞きします。
公立小学校では段階的な35人学級実現、専科教員の導入がされました。私立学校でも少人数学級を実現するため、専任の教員と専科教員の配置が必要です。
少し数字は古いですが、令和元年度の都立高校では教員1人当たりの生徒数が14.3人、私立高校では17.9人。教職員数の公私間格差は歴然です。さらに、障害のある子もない子も安心、安全な学校生活を送るために、校舎の耐震補強、バリアフリー化は必須です。国は、そのための補助金増額の予算措置をすべきです。
私立学校には、幼稚園から大学まで多くの子供、学生が学んでおり、その建学の精神に基づいた独自の校風、教育理念が日本の公教育に多様性をもたらしてきました。しかるに、公立高校の生徒一人当たりの学校教育費109万1000円に対し、私立高校の生徒1人当たりの経常費助成金は約34万5000円と、3分の1です。教育条件の公私間格差をなくし、誰もが経済的負担を気にすることなく、希望する高校、大学を受験し、学ぶことができるよう、経常費助成金の更なる増額が必要です。
大臣、いかがですか。
○国務大臣(盛山正仁君)
私立学校は建学の精神に基づいた個性、特色ある教育を実施しております。そして、我が国の学校教育において重要な役割を果たしていると考えております。
私学助成はこうした私立学校が果たす役割の重要性に鑑みて、教育条件の維持向上や学生等の修学上の経済的負担の軽減、経営の健全性の向上を図ることを目的とし、経常費助成やICT機器の整備、推進、施設整備の充実など、様々な支援を行っております。
文部科学省としては、引き続き、幅広い観点から支援施策を推進し、子供たちがどこに住んでいても、どのような家庭環境にあっても、自らが望む教育を受けることができる教育環境の整備に努めてまいります。
御指摘の私学助成につきましては、令和6年度の予算案において、昨年度よりも拡充しているところであり、引き続き充実に努めてまいりたいと考えています。
○舩後靖彦君
次に、デジタル教科書導入についてお尋ねします。
令和6年度から、英語は全ての小学校5年生から中学校3年生を対象として、算数、数学は一部の学校の小学校5年生から中学校3年生に段階的に導入されます。
デジタル教科書の価格は、紙の教科書の定価の38%に設定されているとのことです。一般書籍のうち、専門書はほぼ同額。コミック、小説などは紙の本の定価の90から80%。ビジネス本などでは50%ということもありますが、38%というのは安過ぎます。この数字の根拠をお示しください。
○政府参考人(矢野和彦君)
お答え申し上げます。
デジタル教科書につきましては、一般の書籍と異なり、一律に紙との併用を、現在のところでございますが、前提に導入しております。これを踏まえ、学習用デジタル教科書の価格については、教科書発行者への調査に基づき、編集費などの紙と重複する部分を除いてコストの積算を行い、その分析結果を踏まえ、各発行者と調整を行いながら単価を設定しているところでございます。その結果として、紙の単価と比較して4割程度の単価となったところでございまして、紙の教科書単価からデジタル教科書の単価を算出したものではないということをお答え申し上げます。
○舩後靖彦君
資料を御覧ください。
小中学校英語、小学校算数、中学校数学の紙の教科書とデジタル教科書の定価とページ単価です。元々紙の教科書の定価が原価に対して安過ぎて、少子化と相まって教科書発行から撤退する出版社が相次いでいます。国語は8社から3社に減っています。これでは教科書の多様性が失われ、学校教育が画一化してしまいます。
昨今の紙印刷代の高騰に対し、2024年度予算で3%定価を上げていますが、とても足りません。デジタル教科書は、単に紙の教科書の印刷データではありません。動画、音声データなどのコンテンツを独自に作成したり、関連事項のリンクを貼ったり、紙の教科書以上に時間と労力と費用が掛かります。例えば英語の場合、紙の教科書では、テキストの音声データは別売りCDに収録されていました。しかし、デジタル教材ではQRコードで読み取りになり、価格に反映されません。また、単なる音声データだけでなく、外国人のタレントを使った動画を付けたりするため、動画作成費用が莫大になります。
さらに、デジタル教科書は、製作後も端末のOSやブラウザのバージョンアップに対応し、正確に作動するか使用環境の検査が不断に必要になります。また、デジタル教科書のデータを置くサーバーのメンテナンス費用も教科書会社にとって負担になります。
文科省は、こうしたデジタル教科書作成の労力、費用、動作環境、サーバーの維持管理経費を理解しているのでしょうか。この価格では採算が合わず、やるだけ赤字となります。教科書会社は、学校教育において中心的な教材である教科書作りの責務と社会的要請に応えるため、厳しい経営状況の中、子供たちにより良い内容を届けたいと努力しています。にもかかわらず、紙の教科書、デジタル教科書の価格が適正なものに見直されなければ、教科書会社は経営維持できません。
また、教科書会社だけでなく、全国の学校に教科書を納入する教科書取扱書店にも影響が及びます。子供の数が減り、教科書取扱書店がこの10年で16%も減少しています。地方や離島では、4月、新学期に学校に教科書が届かないということにもなりかねません。
全ての紙の教科書について原価計算を行い、適正な定価設計をすること、そして、デジタル教科書の価格設定の根拠を大幅に見直す必要があると考えますが、いかがですか。
○政府参考人(矢野和彦君)
お答え申し上げます。
教科書を安定的に供給するため適正な価格を設定することは大変重要なことと考えておりまして、文部科学省といたしましては、前年度の定価をベースに、毎年度、物価の変動等を勘案し、適切、適正な教科書価格となるよう努めているところでございます。
各教科書発行者によって製造過程や仕入れの実態等が異なる、様々異なる中、実際に掛かった経費の積み上げによる原価計算により単一の定価を決定することはなかなか困難なものであると考えております。
今後とも、教科書が持つ高い公共性も踏まえ、教科書発行者等にも調査を行いながら適正な教科書価格となるように努めてまいります。
○舩後靖彦君
代読いたします。
教科書は、授業の核となる大切な教材です。子供たちに良いものを届けたいという教科書製作者のモチベーションに頼った状況を改善し、現場の労務量を反映した適正な価格設定の見直しを再度お願いして、質問を終わります。