文字盤使用に対する合理的配慮へのご質問について

2019年11月7日、参議院文教科学委員会での初めての質問終了後、記者の囲みインタビューで、大臣の答弁に対する再質問の際、文字盤で読み取りをしている間は時計を止めて、質問の持ち時間には含めない合理的配慮について質問を受けました。

その際、私はこのように回答しました。

「(再質問の準備に20分かかり)ご迷惑をおかけした。反省している」

この回答について、言語障害があり私と同じく文字盤を使われる障害者運動の大先輩と、知的障害があり、考えをまとめたり話したりするのに時間がかかる方から、お手紙をいただきました。

「舩後さんは言語障害者の代表として国会で発言する立場なのに、待っている時間を『ご迷惑』と言って謝ってしまったら、私たち言語障害が発言する機会が奪われてしまう。撤回してほしい」

という趣旨でした。

お手紙いただいた方々と直接お会いし、同じ言葉を奪われてきた者として、ご指摘を受け止めながら、私の考えをお話しいたしました。その際、報道の仕方によっては、私が文字盤を使って質問準備をする際の合理的配慮を否定したようにも受け取れるため、きちんと説明を公表していただきたいとの要望を受けましたので、ここに公開いたします。

私は、声で話せない当事者として、文字盤を使って自分の考えを伝えるための時間を守りたいと考えております。私以外の同じような立場の地方議員やこれからあとに続く方にも、私に認められた文字盤の時間を合理的配慮の前例として、これからも続けていただきたいと考えております。

ただ、文字盤のために与えられた時間は権利とはいえ、そのためにほかの委員や大臣、役人の方に、本来の委員会が終わる時間を超えて待っていただいたのは事実です。国会では、議員が質問を準備するために時計を止めて待つ、ということは初めての経験でした。

この時は初質疑ということもあり、四面楚歌の気分に陥っていたことも正直ありました。そのため一人でも多くの先生方に味方になってもらいたいとの思いからの発言でした。

そのようなときに、例えば事故で電車が遅れて待ち合わせの時間に遅れた場合、自分のせいではなくとも、待たせた相手に、「お待たせして申し訳ありません」と謝るのは、人と人との関係として普通のことではないでしょうか。

そのように考えて、私は、初質問の後に、文字盤で質問準備をする間待っていただいたことに対して、合理的配慮だからあたり前、ではなく、「ご迷惑をおかけした。……次回はもう少し改善したい」と申し上げました。

でもその後、本当は、「文字盤を読んでいる間、待っていただいてありがとうございました」という言い方が、自分の気持ちにピッタリくる言葉であったことに気がつきました。

終了後、想像より多くの先生方が「支えるよ」との声も、寄せて下さいました。言語障害のある方や知的障害の方の発言・意思表示の機会、時間を守ってもらえるよう、私も自分が文字盤をする時間をこれからも守りたいと思っております。そのために、周囲の障害のない方への働きかけを続け、「障害者ペースの時間」への理解をひろめていきたいと考えております。

今後も、こうした厳しいご意見にも耳を傾けながら、取り組んでいきたいと考えます。私を頼って下さる方々の声が、活動の原動力であるということを実感しながら活動していく所存です 。今後ともご指導・ご鞭撻賜れば幸いです。

2020年3月

参議院議員 舩後 靖彦

※ 文教科学委員会におかれましては、議員の要望を踏まえて「質疑中に文字盤を使用して質問の準備が行われる場合は、必要に応じて、委員長の判断で速記を止める」という合理的配慮の提供を、委員長や各会派の代表者で構成する非公式の「理事懇談会」で合意して頂いています。