2020年6月2日 参議院文教科学委員会質疑(後半 著作権法改正案に関する参考人質問)
※参考人の方々の氏名と肩書
一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構代表理事
後藤健郎さん
公益社団法人日本漫画家協会常務理事
赤松健さん
早稲田大学法学学術院教授
上野達弘さん
○舩後靖彦君
代読いたします。
れいわ新選組の舩後靖彦でございます。
本日は、後藤参考人、赤松参考人、上野参考人にお越しいただき、御意見を伺う機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
早速、提出法案について質問させていただきます。
本法案は、さきの国会提出が見送られた経緯から、違法ダウンロードの規制をめぐり、海賊版被害の実効的な対策を取ることと正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこととの間でぎりぎりのバランスを取ったものと伺っております。
そこで、三人の参考人にお尋ねいたします。
それぞれのお立場から見て、権利の保護と適正な利用促進のバランスはどうあるべきか、また、本法案ではどのような点が不足しており、その課題を解決するために今後どのような検討、取組が必要とお考えになりますでしょうか。
○参考人(後藤健郎君)
ダウンロードの件につきましては、違法にアップロードされたことを知りながらダウンロードする場合のみというまず前提がありまして、それ以外に様々な除外事由、スクショを除外するですとか軽微なものを除外する、さらに二次創作等々を除外するといったかなりの除外事由があります。
そして、問題になりましたのが権利者の利益を不当に害する場合をどうするかという案でございまして、これにつきましては、やはり抜け穴をつくるという可能性がありまして、先ほど来申しているように、海賊版業者は非常に賢いですから、その辺をついてくるということです。いわゆる居直りですとか、それを逆手に取って喧伝するやからと。不当に害しながら、大丈夫ですよと、どんどん私のをダウンロードしてくださいというようなことがあるわけです。
それにおきましては、今回は著作権の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合ということで、山田先生の自民党の方で御検討いただきましてこのような案が出てまいりまして、私は非常にこれはよろしいということで、権利者のいわゆる権利が担保されたものと認識しております。
○参考人(赤松健君)
今回の改正案ですけれども、非常にバランスの取れたものですし、漫画と映画音楽は結構違うので、そこの使われ方に関して特殊な要件を加えたということになっているんですけれども、これに関しては、足りないものと言われましたダウンロードに関しては、我々の意見がほとんど全て通ったということで、足りないものはないというぐらいよくできていると私は感じております。
○参考人(上野達弘君)
今回の法案は様々な項目があるわけですけれども、特にリーチサイトなんかは、本当に誰も反対していないというか非常に賛同される、非常に賛成が強いと思います。もちろん、問題になるのがダウンロード、違法化の部分でありまして、学説上は、現在もやや消極的な方というのもいらっしゃると思います。
ただ、この一年半掛けて幅広く意見を聴取されまして、最終的には非常に念入りな条文ができましたので、これ実際には当事者の中で広く賛同を得ているというふうに認識しておりまして、これは大変良い法案になっているんじゃないかなと思っております。
○舩後靖彦君
代読いたします。
ありがとうございます。
今回の改正で、違法にアップロードされた侵害コンテンツをまとめてリンクを貼っているリーチサイト対策が盛り込まれ、民事、刑事罰の対象とされました。しかしながら、こうしたサイトのほとんどは、ドメイン登録、サーバーを置く国、サイト運営者が存在する国が複雑に分かれており、告発するにも人手と時間とお金が掛かり、取締りは非常に困難であると想像いたします。
海賊版サイトによる深刻な著作権侵害につきましては、これまでも、CODAさん始め著作権者やコンテンツの制作、流通、販売に関わられる業界団体を挙げて対応されてこられたと存じます。その御経験から、本改正案での海賊版サイト対策の実効性について、後藤参考人、赤松参考人から御意見を伺いたいと存じます。
○参考人(後藤健郎君)
いわゆる、おっしゃるとおりでございますけれども、中国、台湾、香港等々であれば、政府機関と非常にCODAはいい関係がございますので、対処できるというように感じております。
問題は、アメリカ、アメリカも別ですけど、ヨーロッパですね、ヨーロッパとか、先ほど来言っています著作権に寛大な国ですね、寛容な国ですね、これをどうするかということでありますが、先ほど来申していますように、CODA単独では無理だと思っています。やはりACE、MPAと一緒に、主体になっているACEという団体がありますので、あそことも毎年定期会議をやっていますので、彼らとも連携しつつ、言葉は悪いですけど、取りあえず彼らのやっている調査なり権利執行、それに相乗りする形で私たちも共同エンフォースメントに参加したいというふうに思っています。現に今一件、アニメのすごい国際的なサイトがあるんですが、それをACEと一緒に摘発のための準備を進めているという状況でございます。
以上です。
○参考人(赤松健君)
今回の法案について、実効性に関してですけれども、ちょっとさすがにクリエーターとしては専門じゃないのでちょっと分かりかねるんですけど、いろいろ話題になることによって読者に著作権に関するリテラシーが広まったことに関してはよかったとは思っています。
○舩後靖彦君
代読いたします。
ありがとうございます。
次に、侵害コンテンツのダウンロード違法化についてお尋ねいたします。
本法案で、違法にアップロードされたと知っていながら侵害コンテンツをダウンロードすることが違法化されましたが、その中から二次創作物、パロディーのダウンロードは除外されました。これは、大概の場合、原著作者が二次創作物、パロディーを黙認していることを前提にしているからと存じます。ただし、二次創作物、パロディー作品がそもそも著作権侵害に当たり違法なのかという点はここでは問題にされておりません。
そこで、上野参考人にお聞きしたいのですが、最近、日本外国特派員協会が作成した東京五輪のエンブレムのパロディー作品が東京都から著作権侵害を主張され、取り下げられました。ネット上では賛否両論、パロディー作品が引用されながらアップロードされています。これをダウンロードした場合は違法となるのでしょうか。その場合、誰の著作権を侵害しているから違法となるのでしょうか。どう考えたらよろしいのか。
それともう一つ、パロディーの文化的価値や権利性については、著作権法上、別途検討されてしかるべきと存じますが、この点について赤松参考人はいかがお考えでしょうか。
○参考人(上野達弘君)
オリンピックのエンブレムがもし著作物であって、そしてパロディー作品がその著作権の侵害に当たるとしますと、それはアップされているということが著作権の侵害に当たりますけれども、今回の法案では二次的著作物となっているような著作物のダウンロードは対象外となっていますので、ダウンロードは適法だということになるかと思います。
このパロディーに関しましては、なかなか、日本では裁判例もほとんどないですし、そしてパロディー自体がどれぐらいあるのかというふうにも言われておりまして、なかなかルール形成というのができない状況にあります。
ただ、他方では、コミケの同人誌とか、そういったものも盛んに行われているところでありまして、日本では条文もないのに、諸外国ではパロディー許されるとかという規定を持っている国が多いんですけれども、あるいは判例が多い国もありますけど、日本では条文もないのにどうして緩やかにコミケが許されているんだというふうによく質問されるんですね。これは、不思議な黙認の世界でありまして、コミケで育ったからそれを許容しているという漫画家の先生も多いんだと思います。
ですから、これを明文化するのがいいかどうかというのはちょっと考え物でありまして、今後も検討が必要かというふうに思っております。
以上です。
○参考人(赤松健君)
二次創作とパロディーの件に関してですけれども、私もコミケット出身の作家でありまして、あらゆる芸術はまねから始まる、学びはまねびと言いまして、そういうふうなものが今創作の揺り籠になっているということで、漫画家としてもパロディーと二次創作をめぐる現状変化は望んでいないというのが大方の意見だと思っています。
○舩後靖彦君
代読いたします。
ありがとうございます。
引き続き、ダウンロード違法化についてお尋ねいたします。
既に法制化されている音楽、映像に関しましても、個人の違法ダウンロードは摘発された事例はなく、今回も実際に法的責任を追及することよりも抑止効果が狙いかとは存じます。
しかし、明らかな海賊版サイトはともかく、個人がSNS等で投稿したコンテンツなど、違法にアップロードされたものかどうか判断するのは難しいと存じます。一般の利用者が利用を萎縮してしまう可能性と、逆に、知らなかった、勘違いしたで違法ダウンロードを繰り返す悪質な利用者が出ないとも限りません。この主観要件は立証することも反証することも難しいのではないかと考えますが、主観要件の取扱いについてのお考えを後藤参考人、上野参考人にお聞きしたく存じます。
○参考人(後藤健郎君)
あくまでも、私ども権利者としては、グレーなものについては対応はしないというふうに思っています。いわゆる悪質なものについて警告をするという形になろうかと思っていまして、いわゆる軽微性、いわゆるそういうのは除外されています、軽微性とかあらゆる除外事由が付いていますので、まずそれを超えてやるものというのはまずないのかなというふうに思って、認識しております。
以上です。
○参考人(上野達弘君)
このダウンロード違法化に関しましては、インターネット上にあるものが違法かどうかなんて分からないんだから、うっかり違法なものをダウンロードしてしまうと、それが違法だとか刑事罰だとかというのは困るというのはもちろんそのとおりだと思います。ですから、今回、知りながらという要件が入っていて、そして確認、解釈規定まで入っておりますので、確定的な認識を持ってダウンロードしたときだけが対象になるということになっております。
権利者にとってはそれを立証するのは難しいじゃないかということもあるかもしれませんが、一回警告してそれでもなお続けていると、すると、さすがにこれは確定的な認識があるということが立証できるのではないかなというふうに思っております。
○舩後靖彦君
代読いたします。
ありがとうございます。
通常のネット利用者には、著作権や著作物利用に関わる知識を得る機会はまずありません。そのため、一定の要件の下で侵害コンテンツのダウンロードが違法化、刑事罰の対象になることについて身近で分かりやすい説明、啓発がないと、法改正しても、実効力がないか、逆に必要以上に萎縮させてしまうことになりかねないと存じます。その辺りを政府にお願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。