2019年11月19日 文教科学委員会 参考人質疑(大学入学共通テスト 記述式試験/障害のある受験生への合理的配慮)
○舩後靖彦君
れいわ新選組の舩後靖彦でございます。
参考人の皆様におかれましては、お忙しい中お時間をいただき、本当にありがとうございます。
御覧のとおり、私は声を出すことが困難なため、秘書の代読という形で質問したく存じます。御理解のほどよろしくお願い申し上げます。
代読いたします。
さて、私は、七日の委員会質問でも大学入学共通テストにおける障害学生への合理的配慮について質問いたしました。障害のある学生が新しく導入される大学入学共通テストにおいて、公平公正に試験を受けることができるかについて深い関心を寄せております。本日もこうした課題についてお尋ねしたいと考えております。
高等教育を目指す障害のある子供は年々増えております。日本学生支援機構実施の障害のある学生の修学支援に関する実態調査によりますと、全国の大学、短期大学及び高等専門学校で学ぶ学生は、二〇一八年度で三万三千八百十二人に上り、十年前の六千二百三十五人から約五倍となりました。
今後も大学などで学びたいと考える障害のある学生はますます増えていくことでしょう。障害のある生徒が能力を公正に評価され、学ぶ場を得ることができるということは、その人が持つ能力を発揮するために不可欠です。試験方式に適用できないことなどを理由に高等教育の機会を逸してしまうのは、これからの日本の社会にとって大きな損失となります。
今回、新しいテストが導入されますが、このまま実施されてしまうと、障害のある生徒にとって貴重な機会から排除されてしまうのではないかという懸念を拭い切れません。
まず、英語民間試験についてです。
この件に関しましては、先般延期が決められ、今後、文科省において検討がなされると聞いております。英語民間試験については、この委員会でも質疑を行い、事業者ごとに配慮の対象者の表記にばらつきがあること、配慮内容についても統一されていないといった問題点を指摘させていただき、萩生田文部科学大臣も対応がばらばらであることを認める答弁をなさいました。
結果的に延期は決められたとはいえ、こうした不透明な状況の中で実施されようとしたこと自体が、大学入学共通テストの問題点を浮き彫りにしていると考えております。
さらに、来年度予定されている記述式試験に関しましても、同じように、障害のある生徒が公平公正に試験を受けることができるのか、強い懸念を抱いております。
例えば、これは大人の方ですが、視覚障害のある方がこのような意見を寄せてくださいました。プレテストの国語の記述式試験では多くの資料を読み解く必要がありました。しかし、障害のある人は、同じ分量を読むにしても、目の見える人よりも時間が必要になります。資料の読み解きなどを求められる記述式試験で、視覚障害者がほかの人と変わらず公平に試験を受けるためには、そのための時間延長などが必要だと思いますが、実際にどうなるか分からないので心配しているとのことです。
一方、発達障害のある方からはこんな意見もあります。学習障害の一つで文字の読み書きに困難さを持つ方、ディスレクシアの受験生が非常に不利になるのではないか。読み上げ機能や書字補助機能のあるタブレットやワープロを活用した受験は認められるのか。従来型の入試の場合、アスペルガー症候群の人はマーク形式の試験をパターンで覚えて解いていたが、記述式試験の導入で、想像力が欠落する分、記述をまとめ上げられずに不利になるのではないか。字を書く速度が著しく遅かったり、字が極度に雑だったりする発達障害者は不利になるのではないかというものです。
大学入試センターにおいては、記述式試験に関して、点字を使用する受験生に対しては、国語の記述式の問題数を減らすことや、字数制限を設けないことなどを予定されているとのことです。また、一般の解答用紙に解答することが困難な入学志願者に対しては、解答欄の大きさなどを変更した用紙を使用できる、パソコンを使用した解答ができるといった配慮を考えているそうです。しかし、詳細な配慮内容については現在検討中で、来年度に公表されるそうです。そこから準備をしなければならない受験生の立場で見れば、とても不安なことではないでしょうか。
本日お集まりいただいた皆様も、それぞれ障害のある生徒さんや学生さんと接する機会がおありかと思います。重ねて申しますが、障害があってもなくても、学びたい場所で学ぶことのできる環境を整えることはとても大切だと考えておりますが、皆様も同じ心情だと推察しております。障害者権利条約の理念などに照らしましても、障害のある人が高等教育にアクセスしやすい社会にしていくことが急務と言えます。
そこで、現在予定されている大学入学共通テストにおきまして、現行のまま実施されると障害のある生徒さんにとってどのような問題があると見込まれるのか、その上で、障害のある人にとっても公平公正な試験を行うために文部科学省に対してどのような対応を求めるのか、この二点について、参考人の皆様の御意見をお願い申し上げます。
○参考人(萩原聡君)
これまでも、大学入試センター試験においてはかなり配慮をしている部分があったというふうにも聞いております。また、例えば本校なんかでも、耳が聞きにくいというようなお子さんに対する特別な配慮をお願いをしたりというようなことも今までもしてきております。
今回について、今お話がありましたように、共通テストにおいても、是非とも配慮をすべきことについては大学入試センターの方で是非とも配慮をいただきたいということと、それから、今お話が出たように、事前にその部分が明らかにならないとなかなか受験をするのもためらうというようなお話も今先生の方からもありましたので、やはり是非ともその部分早急に、実施するに当たってはということで提示をいただきたい。また、個別に相談に乗っていただくような形での窓口等々の設置等をお願いをしたいというふうに考えております。
○参考人(吉田晋君)
学校という立場でいうと全く同じ状況でございますので、是非国そして都道府県の教育委員会等がやはりきちっとした個別対応をしていただけるような方向付けというかお願いを我々とともに一緒にやっていただきたいというふうに思っております。
○参考人(木村小夜君)
もし実施されるとしたらという前提でお話ししますけれども、問題があるということは今お話しいただいたことでよく分かりました。
やはり、記述するということは、マークを一つ付けるということとは全然違って、様々なその障害を持った方にとって非常にハードルが高いという問題はよく分かります。個別試験の場合でしたら、これに関しては、例えば別室受験をするとかいろいろな配慮をするようにしております。
そういったできる限りの配慮というものがセンターであらかじめ準備できるのかどうか、本当にそういうことも含めて、つまり、障害を持った方の公平な受験ができなくなるというのは、もう取りも直さず、そうでない受験生にとってもやっぱりそれは不公平なことになるわけです。出発点が同じでないというのは、もうそれは試験の制度としては不備なわけですから、その辺りは完全なものを目指していただきたいと。これはあくまでも実施することになった場合の話であって、私自身はマークだけで十分だとは思っておりますけれども。そういう前提でお聞きください。
○参考人(紅野謙介君)
大規模なやはり入試の変更に関しては、二年以上前にやはり発表していくというのが基本的なルールであります。当然、この障害ある受験生に対してはどのような形で対応するかということも併せて発表されていなければなりません。そのような時間的余裕がなく詳細は来年にというふうな形になれば、今、舩後議員の方からお話がありましたように、障害を持つ学生たちは準備の時間ができないというふうな形になるわけであります。この辺は、やはりこの試験自体の問題を浮き彫りにしているようにも思います。
また、障害ある学生、受験生というのも多種多様なんですね。その都度ごと考えていかなければならない。逆に言えば、問題を与えてくれる大きな契機として捉えながら、今後の大学入学共通テスト、私はセンター試験の継続でもまだいいと思いますけれども、そのような形で新たに入試を考え検討していくという課題というふうにしていただきたいというふうに考えております。
以上です。
○舩後靖彦君
先ほどの質疑の中で木村先生の御意見をお聞きし、ジャッジメント能力を高める試験勉強が必要と解釈いたしました。私も同じ思いにあります。皆様、貴重な御意見ありがとうございます。
その上で、重ねて文学の専門家であります木村先生、紅野先生にそれぞれ一点お尋ねしたいと考えております。
現行のままで記述式試験が行われてしまいますと、能力はあるのに実施方法の問題で解答、表現ができない生徒が出てしまうのではないかという懸念が示されています。形に押し込めてしまっては本来ある能力を評価できないばかりか、それはひいては障害のある生徒にとって思考や表現の発展可能性を妨げることにもつながりかねないと感じておりますが、御見解をお願い申し上げます。
○参考人(木村小夜君)
本来の能力が発揮できない、評価できない問題になっていることはもうおっしゃるとおり明らかなんですね。ですから、障害を持った方々というのは更にその上でいろいろなハンディを持っていらっしゃるわけですから。
何というのでしょう、思考力というのは、物すごく複雑なプロセスを経てでき上がっていくといいますか、読んだものが自分の中でまず内面化されて、そして言葉に出されるというプロセスというのは非常に複雑なものです。それはやはり個人差があって、深くゆっくり考えて、すごくいい、こちらが思いもしないような考え方が出てくる人もいるわけですね。片や、もう本当にまさにつまみ食いで、正答例に出てくるような答えを簡単に出してしまう、そういう受験生もいます。そういうところがきちっと区別できるような試験問題というものを構築していく。
センター試験というのは、もう非常に時間を掛けて、何度も何度も議論をしてずっと作られてきたわけです。そういう形で作られるものであれば、一・五倍の時間超過、時間を延長することで障害学生の方、障害を持った受験生の方には何とか対応していただいたのかなと思いますけれども、記述ということの複雑さといいますか、解答するときのそのプロセスの複雑さ、そして障害の個別性、そういうことを考えたときに、これはやはり不公平感が非常に高くなる感じはいたします。
その辺りは、個別入試だったらきちっと、この受験生はそういう問題を抱えているということを念頭に置きつつ受験の体制というものもつくることができるわけですから、改めてその辺りはきちっと、大量の答案の中にそれが一緒に入ってしまうということをやっぱりよく考えて実施体制というのはつくらないといけないと考えております。
○参考人(紅野謙介君)
この間の議論を見ていて、やはり最大の問題はセンター入試が巨大になり過ぎてしまったこと、その巨大になり過ぎてしまったセンター入試をどういうふうにブラッシュアップするかというところから課題がこのような形の議論になってきたんだろうと思いますけれども、しかし、それでセンター入試をこのような形で変えて何とかなるという発想ではなく、センター入試中心の発想自体を徐々に緩めていく、分散させていくことの方がやはり大事なんだろうと思うんですね。
これは、もっと上位の会議の中で複数回受験というふうな話も当初あったというふうに伺っております。実際にセンター入試を複数回やることはできない。しかし、それ以外の入試、今回、総合選抜型入試というふうに名前は変えましたが、AO入試であるとか、あるいは様々な推薦入試であるとか、こういう形態があるわけです。
ところが、AO入試は、少し言葉が悪いですが、ざるのようになってしまっているんじゃないかというふうな意見があって、やはりペーパーによる入試というふうに傾いていってしまったということなんですが、入試形態自体の多様性をむしろ進めていくこと、AO入試自体により力を入れて、もっと学力も測るし、そして個別の能力も測るというふうな形で制度設計をしていけば。大学入学共通テストないしセンター入試にのみ注力して、そこにいろんなものを次々に付けていくうちに、大学の教員たちは監督要領という電話帳のようなマニュアルを渡されまして、あの二日間は缶詰になって対応し、あらゆる問題に関して、何ページを開いてください、何ページを開いてくださいで対応していかなければならない、ここにひずみが生じているのは確かなんです。それを改善していくための方法は以前の案の中にも部分的にあったのであれば、もう一度そこを再検討していただきたい。
恐らく、障害を受けた方たち、障害をお持ちの方々が受けるふさわしい受験形式というのがあるんだろうと思うんですね。そうしたものをいろいろ考えていくこと、もちろんペーパーのものも対応できるようにはしますけれども、それ以外の多様な試験形態ということを是非お考えいただきたいなというふうに考えております。
○舩後靖彦君
ありがとうございます。貴重な意見をいただきました。
是非、皆様からの問題提起をきちんと踏まえ、少なくとも記述式試験を含む大学入学共通テストについては延期が必要だと考えることを申し上げ、私からの質問を終わりたいと思います。