2023年2月27日参議院議院運営委員会質疑(日銀総裁候補に質問)

○委員長(石井準一君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(石井準一君)

速記を起こしてください。

この際、お諮りいたします。

委員外議員舩後靖彦君から日本銀行総裁の任命同意に関する件についての質疑のための発言を求められておりますので、これを許可することに御異議ございませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(石井準一君)

御異議ないと認め、それでは、舩後君に発言を許します。舩後靖彦君。

○委員以外の議員(舩後靖彦君)

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

本日は、日銀総裁候補の植田和男教授、御多忙の中、御出席いただきまして、本当にありがとうございます。

私は、ALSという難病により全身麻痺で、喉に穴を空けて人工呼吸器を付けており、声を出すことができません。このため、パソコンによる音声読み上げで質問をさせていただきます。

それでは、質問いたします。

今日が経済学者の植田先生に聞くことができる恐らく最後の機会なので、日銀の所管外の質問にも是非率直なお答えをお願いいたします。

原田泰日銀前政策委員の回顧録にある植田先生のハイパーインフレ発言は事実ですか。このように書かれています。東大の植田和男教授は、通常の歓迎スピーチの機会に、わざわざメモを用意して、長期金利のゼロ%の金利のペッグがハイパーインフレを引き起こす、金融機関経営が厳しくなり、金融仲介機能を壊して経済を悪化させると述べた。

しかし、ハイパーインフレは年率130倍以上のとてつもないインフレです。供給力が激しく毀損されるなどしないと起こり得ません。10年物の金利を抑えたぐらいでハイパーインフレになるとは考えられません。

日銀の黒田総裁は、財務官時代に格付会社に対して、日本はハイパーインフレになる可能性はゼロに等しいとした意見書を出しました。実際、2016年9月以降、YCC、イールドカーブコントロールとして10年物の金利をゼロ%辺りで固定していましたが、全くハイパーインフレの兆しは見られません。ハイパーインフレの懸念などという主観的な恐怖心で景気回復のための金融政策を否定するのは間違いと考えます。

今でもYCCでハイパーインフレになるというお考えをお持ちでしょうか。

○参考人(植田和男君)

YCCを続けることによりハイパーインフレが起こるというふうには考えてございません。YCCを続ける、イールドカーブコントロールを続けるという現在の政策は、2%のインフレを安定的、持続的に達成するために続けておるものでございまして、それをはっきりインフレ率が上回ってくれば、当然その政策は終了しているというふうに考えます。

今委員御指摘の私の過去の発言でございますが、思い出してみますと、思い当たるコンファランスは、思い当たるコンファランスといいますか、発言をしたコンファランスを思い出しました。そこでは、御指摘のような、あるいは引用されたような趣旨の発言はしておりません。二つのことを発言しておりまして、一つは、長期金利コントロールという政策は、その当時導入されたばかりだったと思いますが、出口のときに難しい問題を抱える可能性があるということを一つ発言した記憶がございます。それとは全く別に、通貨の信認との関連で、ハイパーインフレは通貨の信認を失わせる現象であるということも発言、別のコンテクストで発言した覚えがあります。

この二つがなぜかくっついてしまって、委員が御指摘のような主張に聞こえたというお話であるかなと思いますが、誤解であるかなというふうに考えてございます。誤解があるというのは、引用された原田元審議委員のコメントが誤解であるという意味でございます。

○委員以外の議員(舩後靖彦君)

経済学者の植田和男先生にお伺いします。

経済学者の伊藤隆敏先生は、日本政府は国債で債務不履行に陥る必要も必然性もない、たとえ国債の買手がいなくとも、日本銀行は現金注入で新規国債やロールオーバー、借換え継続した国債を買い続けることができると述べておられます。また、小林慶一郎教授は、外貨建て国債の場合は、市場で国債が買われなくなると、政府は借換えができなくなり、外貨準備が不十分なら期限が来た国債の償還ができなくなる、これは債務不履行だが、日本の場合にはこのようなデフォルトは起きないとも述べています。そして、黒田総裁は財務官時代に、日米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられないと意見書で述べています。

植田先生のデフォルト、借換えについての御見解をお伺いします。三人の意見と同じですか。

○参考人(植田和男君)

国債がデフォルトをするかどうかということでありますが、定義次第だと思いますが、現在、日本の購入が継続、日本の国債がきちんと購入されているということの背景として、政府の財政運営に対する信認が前提となっているものというふうに理解しております。

伊藤先生、小林先生のコメントをちょっと今完全には理解できなかったんですが、少なくとも日本銀行が国債購入を永続的に続けるということはできないと思います。先ほど来申し上げておりますように、これはインフレ率2%を達成するために行っているものでありまして、それが達成された暁には、この大量購入、国債の大量購入はやめるという事態になるというふうに考えてございます。

○委員以外の議員(舩後靖彦君)

質問を続けます。

通貨の信認ということがメディアで言われます。植田先生なりの通貨の信認について簡潔に定義をしてくださいませんか。日本は、その信認の危機にあるとお考えですか。

また、1998年から日銀の総裁を務められた速水優先生は就任前、著書で、自国通貨の対外価値が上がることは日本への信頼を増す要因となると記しておられます。つまり、円高が望ましいと考えていました。しかし、その後、速水総裁が円高を容認する引締め型の金融政策により、日本の産業は国際競争力を失い、空洞化が進みました。

私たちは、日本の産業空洞化を防ぐためには、むやみに円高にしてはならないと考えております。

ずばりお聞きします。植田先生は、円高が日本経済にとって望ましいことだとお考えでしょうか。端的にお答えください。

○参考人(植田和男君)

前段の、通貨の信認の条件といいますか、そういう御質問だったと思いますが、これはやはり、その通貨が発行されている国のインフレ率が大幅に目標を超えて上がったり、あるいはハイパーインフレになる、そういうようなことが起きないということが条件になるというふうに考えてございます。

後段の為替レートに関する御質問ですが、これは、中央銀行家的な答えで恐縮ではございますが、為替レートはそのファンダメンタルズに沿って推移するのが適切というふうに考えてございます。

○委員以外の議員(舩後靖彦君)

終わります。ありがとうございました。